同じ食材でも調理でカロリーは変わる — 重量変化率と吸油量の読み方

食事記録アプリに「鶏もも肉 100g」と入れたとき、その100gは生の状態なのか、焼き上がった状態なのか。食品成分表はこの二つを別の食品として扱っており、100g当たりの数値も違います。同じ食材でありながら数値が変わる理由を、文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の原典から整理します。

成分表は「生」と「調理後」を別の食品として収載している

成分表には、ゆで・炊き・蒸し・焼き・油いため・素揚げ・天ぷら・フライなどの調理後の食品が、生の食品とは別の食品番号で収載されています。そして調理の前後で質量がどれだけ変わったかを示す指標が重量変化率です。定義は単純で、調理後の同一試料の質量を調理前の試料の質量で割って100を掛けた値です。生100gが調理後に70gになれば重量変化率は70%、210gになれば210%になります。

成分表はこの値を「表12 調理方法の概要および重量変化率表」に収載食品ごとに載せています。注意点として、調理後の成分値は必ずしも調理後の試料をそのまま分析した値ではありません。成分表は原則として、調理前の成分値と「調理による成分変化率」から計算して調理後の成分値を求めています。つまり調理後の数値は、生の分析値を土台にした推計です。

水が入る調理 — 米と乾めんは2倍以上になる

加水して加熱する調理では、質量が大きく増えます。精白米(うるち米)の重量変化率は炊きで210%、マカロニ・スパゲッティのゆでは220%、干しそばのゆでは260%、干しうどんのゆでは240%です。

この増加分は水なので、100g当たりの数値は下がります。精白米は生の状態で342kcal/100gですが、炊いためしは156kcal/100gです。生米100gを炊くと約210gのめしになり、その210g分は約330kcalにあたります。乾めんも同じ構造で、乾いたマカロニ・スパゲッティは347kcal/100g、ゆでた状態は150kcal/100gで、乾100gからできる約220gは約330kcal相当です。

数値が半分以下に見えるのは水で薄まった結果であり、総量はほぼ変わりません。記録のうえで問題になるのはここです。乾麺の重量を測って、ゆでた状態の数値で計算すれば半分以下に、逆にゆでた重量に乾麺の数値を当てれば2倍以上に外れます。

水が出ていく調理 — 100g当たりの数値は上がる

ゆでや焼きでは逆向きのことが起きます。ほうれんそうのゆでは重量変化率70%で、100gが70gになります。このとき100g当たりの数値は生18kcalからゆで23kcalへと上がりますが、生100g分にあたるゆでほうれんそう70gは約16kcalで、総量は減っています。

方向は野菜によって違います。ブロッコリーのゆでは重量変化率111%で、ゆでると逆に重くなります。キャベツのゆでは89%、ブロッコリーの焼きは55%です。

肉ではこの差がさらに大きくなります。鶏もも(皮つき)の焼きは重量変化率61%です。生は190kcal/100g、焼きは220kcal/100gで、100g当たりでは増えています。しかし生100gから焼き上がる61gは約134kcalで、実際には約56kcal減っています。水分と脂が落ちたためです。鶏むね(皮つき)の焼きも62%、鶏もも(皮つき)のゆでは70%です。

油が入る調理 — 吸油量は食材で大きく違う

成分表は「表13 揚げ物における衣の割合及び脂質量の増減」で、生の材料100gから作った揚げ物の吸油量を示しています。生の主材料100g当たりの吸油量は、ぶたロース(脂身つき)のとんかつで13.4g、まいわしのフライで26.5g、なすの天ぷらで15.2g、ぶなしめじの天ぷらで32.3gです。食材の表面積と水分の抜け方で桁が変わります。

一方で、揚げれば必ず脂質が増えるわけではありません。鶏もも(皮つき)のから揚げの吸油量は−0.7gで、入った油より落ちた脂のほうが多いという結果になっています。くろまぐろ(脂身)の天ぷらも−5.2gです。とんかつでも、ぶたロース(脂身つき)の13.4gに対し、ヒレ(赤肉)は20.9gで、脂の少ない部位のほうが多く吸っています。

炒め物も同様です。成分表は生100gに植物油5.0gを使った条件で、食品側に残った脂質の増加量を示しています。ほうれんそうの油いためで4.3g、キャベツで4.6g、にんじんで4.3g、あめ色たまねぎで2.0gです。フライパンに入れた油の全量が食品に入るわけではありません。

目安として使える数値もあります。国民健康・栄養調査で用いる「調味料の割合・吸油率表」では、「素材+衣」の質量に対する吸油率を素揚げで10%、普通の衣のフライで10%、厚い衣のフライ(串カツなど)で15%としています。

記録するとき、生と調理後のどちらで入れるか

国民健康・栄養調査の食品番号表は、この問題を調理コードで処理しています。生の食品番号と生の重量を記録し、ゆで物・煮物ならB、焼き物ならR、炒め物や揚げ物・蒸し物ならXのコードを付けて、調理による重量と栄養素量の変化を後から反映させる仕組みです。複数の調理を行った場合はB、R、Xの順で優先順位の高いものを選びます。そして調理後の重量を記録して調理後の食品番号を用いる場合は、調理コードを付けません。同じ資料の例では、ほうれんそうは「生 100g」と「ゆで 70g」が対応する組として示されています。

個人の記録で実務的に効くのは、片方に統一することです。生の重量を測れる自炊では生の食品で記録し、出てきたものを記録する外食や惣菜では調理後の食品で記録する。混ぜないかぎり、2倍や半分の外れ方は起きません。食事記録の入力方法は4通りあるで整理したとおり、どの入力方法でも参照しているのは同じ食品データなので、重量の基準をそろえるだけで精度は変わります。

CaRoot での扱い

CaRoot は食事の写真から AI がカロリーと PFC を推定するアプリです。写真に写るのは調理後の状態なので、AI スキャンが推定しているのは調理後の食品です。生の重量を測って記録したい場合は、内蔵の食品データベースから生の食品を選ぶか、名前で概算を使って入力します。同じ料理を繰り返し食べるなら「いつもの食事」に登録しておけば、一度決めた基準を毎回同じ条件で使えます。

できないことも書いておきます。写真から油の吸収量を個別に割り出すことはできません。上に挙げたとおり同じ揚げ物でも吸油量は食材と部位で大きく違い、見た目からは判別できないためです。写真からのカロリー推定はどこまで合うかで触れたとおり、脂質は推定が最も外れやすい栄養素です。揚げ物や炒め物が多い日は、数値を厳密な実測としてではなく、週単位の傾向を見る材料として扱うほうが実態に合います。

出典

本記事は一般的な栄養情報の解説です。特定の疾患の治療や食事療法については、医師や管理栄養士に相談してください。

CaRoot は、写真を撮るだけで
記録が終わる食事管理アプリです。

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